武市賢太郎ブログ
【感謝】
この度サティラヘアーは、11月12日に移転オープンする運びとなりました。
長年ご利用くださり、現在の店舗に親しみを感じてくださっているお客様の中には、あるいは移転を寂しく思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし時代は移り変わり、サティラヘアーも次のフェーズへと移行していきます。新しい店舗は、さらに心地よく過ごせる空間になる予定ですので、暖かい目で見届けていたただけると嬉しく思います。
これまでの間、たくさんの素晴らしいご縁をいただき、充実した日々を過ごすことができたことに改めて感謝いたします。
【残尿感】
しかし、僕がこの8年間をくぐり抜けてきて感じることは「本当にこれでいいのだろうか?」という疑問であり、「なんだかモヤモヤする」という残尿感に近い感覚です。
サティラヘアーを始めた当初はとにかく必死でした。当時は29歳の若造でしたし、鼻息も荒く「成功したい」という想いも強かった。若い頃の勢いというのは、あるいはそのような「我」や「欲」をエネルギーにしているのかもしれません。経営していくなかで辛い思いも随分経験しましたが、基本的には右肩上がりで成長し、スタッフも増えていきました。数年で軌道に乗り、どんどん忙しくなりました。さらに相模大野店もできました。美容室を2店舗も出店できた事は、小さいながらも美容師としてのある種の達成と言えるかもしれません。
当時は、上を目指して必死になって階段 を登るような感覚で、毎日仕事をしていました。
【迷い】
しかし、2年前にあることがきっかけで、ふと力が抜けてしまった時期がありました。ちょうど階段の踊り場に出たような感覚かもしれません。
そこであらためて周りをぐるっと見渡した時、そこから見えた景色には何かしら間違ったものが含まれているように感じ、漠然とした不安に襲われました。今まで必死になりすぎて、景色を眺める余裕なんてなかったのです。
それは微妙なズレではあるけれど、決定的な間違いのように感じました。
とはいえ、当時はいったいそれが何だかもわからずに、どうしたら良いのかもわからずに、モヤモヤした気持ちを抱えたまま仕事を続けていました。
【離脱】
今年の春先にヘルニアを患い、しばらく美容師の仕事から離脱してしまいました。それ自体はとてもキツい経験でしたが、おかげで自分の気持ちと向き合うことができ、今までやったきた仕事についてもじっくり考えることができました。
そして、「僕はビジネスとして美容師をやりたいんじゃない」ということがわかりました。
今まで僕が必死になって登ってきたのは「ビジネス」という名の階段で、そこから見えた景色とは「商業的成功」でしかなかった、という事に気づきました。そして僕はそんなことを求めていなかった。
経営をしていくうえで「どうしたら売れるお店になるか」「どうやって利益を出していくか」などを考えていくことは、経営者の使命です。さらに売れるヘアスタイルだったり、効率的な仕事だったり、魅力的な宣伝広告だったり、なんやかやを考えなければなりません。
しかしいつの間にか、もっと大切にしなければならないものが損なわれていました。
必死に仕事をするうちにどこかで登るべき階段を間違えていたのです。
「さて。まずは今まで登ってきた階段を下りなければ。」
【今後】
再スタート。移転。
まずは、どんなお店にしていきたいか?結論を言うとサティラヘアーを「サロン」にしていきたいと思っています。美容室の事を「ヘアサロン」とも言いますが、そもそも「サロン」とは何か?
Wikipediaで調べると
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サロン(仏: salon[※ 1]、英: salon[※ 2][※ 3])とは、もともと応接室などの部屋を意味する言葉である。
応接間、談話室など。
フランス語で宮廷や貴族の邸宅を舞台にした社交界をサロンと呼んだ。主人が、文化人、学者、作家らを招いて、知的な会話を楽しんだ。 Wikipedia
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とあります。僕がやりたいヘアサロンとは正にこんなイメージです。地域の社交の場であり、談話や文化交流のできる場。人と人とが商売以上の繋がりを持てる場。
まずは、美容師の仕事を「ビジネス」ではなく「文化」と位置づける。すると必然的に仕事は「文化活動」になります。そのようなスタンスにこちらがなるだけで、もっと気軽で親密な人と人との繋がりを楽しめる場所になりうるのではないでしょうか。この地域の住む人達にとっての「サロン」として機能し、文化交流の場になりうるのではないでしょうか。
僕はそんなお店にしていきたい。そんな仕事をしていきたい。「ビジネス」ではなく「文化」の階段を登っていきたい。
それが前提にあって、技術もおもてなしもブラッシュアップしていければ、よりレベルが高くとても素敵なお店になるのではないかと思います。
それがこれからの僕とサティラヘアーが歩むべき道である、と確信しています。
【脱・残尿感】
長くなりましたが、これがこの度の移転に対しての僕の想いであり、決意であります。
そしてそれが達成された時、僕の残尿感もいくぶんスッキリしているのではないでしょうか。
最後に、サティラヘアーに今まで来ていただいていた方とも、これから出会う方とも、よりも親密な関係を築いていけたら、これに勝る喜びはありません。その親密な関係が不倫へと発展し、「不倫も文化活動ですから」と言い出さないようにだけは注意しなければ。
武市賢太郎