武市賢太郎ブログ
ごくたまに、老婦人から「セシルカットにしてくださる?」という注文を受けることがある。とても素敵なヘアスタイルだけど、知らない方も多いと思うので解説しておく。
1950年代の映画「悲しみよこんにちは」で、主人公セシル役を演じたジーンセバーグが人気を博し、世界的にヒットしたヘアスタイルだ。
ヴィダルサスーンが世界を席巻するより以前のもの。
かなりのベリーショートで、一つ間違えるとボーイッシュになりすぎる。下手すると強制収容所を連想させてしまうような代物になってしまうだろう。
だけど、彼女はこれほど髪が短いにも関わらず、とても女性らしく、洗練されていて、色気まで感じさせる。素敵だ。
「ジーンセバーグだから素敵なのよ」と言われてしまえばそれまでだが、僕から見て「この人はベリーショートも似合うだろうな」と思うだけの条件が揃った方も少なからずいる。
一生に一度くらいはチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
似合わない場合はちゃんと止めます。
ところで、フランソワーズ・サガン著の原作は、僕がとても好きな小説の一つ。
とくにフランス文学に詳しいわけではないので気の利いた事は言えないけれど、率直に言っておもしろい。主人公セシルの内面描写、特にそのアンビバレンスがとても細やかに表現されていて素晴らしい。1954年の作品なのに古さを感じさせない。むしろ垢抜けている。
当時18歳という若さでこの作品を書きあげたサガンのセンスには脱帽。
新訳は文体も読みやすくて良い。
映画は「駄作だよ」と聞かされてるので観た事はないけれど、小説は本当にオススメ。
ただ、この小説を読むと、「乙女ごころって・・・」とも思う。僕が若かりし頃、セシルのような二面性のある乙女ごころとやらに何度振り回されてきた事か・・・。
ちなみに、僕がこの小説から勝手に連想するセシルのヘアスタイルは、レイヤーの入ったリップラインのショートボブ。なんでだろう?ベリーショートのイメージではないんだけどな。
武市賢太郎